11月9日の日記

今日は、デッサンやボディアート、ビデオアートを教えている先生が、世界のアクションペインティングの先駆者、日本のアーチスト集団、『具体』のグループの第一人者の嶋本昭三氏のナポリで２００６年に行ったパフォーマンスのビデオを見せてくれた。


戦後、アクションペインティングやパフォーマンス団体『具体』の活動は、世界の芸術界における政治的な駆け引きにより、フランスにおいては当時ヨーロッパで興っていた『Informal art』として紹介され（アクションの結果できたもののみを解釈し、アクションの部分が抜け落ちた）、また、フランスと現代アートの分野で主導権争いをしていたアメリカは、当時、アメリカで興ったアクションペインター達の活動が世界初という認識を示した。

『具体』のグループが、ヨーロッパでいう『Informal』として、アメリカでは、『Expressionism abstract picture』という範疇で紹介されてしまったため、具体発足当時に一般観衆を巻き込んだパフォーマンス、アクションアートの部分は欠落してしまうこととなり、後続の若いアーチスト達は『Informal』絵画の活動を主としてしまったため、『具体』の活動は芸術史の中のアクションアートの片隅に登場するにすぎなくなってしまった。

具体アーチスト達の活動は、発足当時から度肝を抜かれるようなパフォーマンスで有名。トラクターやクレーン車を使って空中から色水の入っ瓶を地面に大きく敷かれたキャンバスに何度も繰り返して投げ落としたり、女性アーチストはヴァギナに筆を挟んでInformalな絵を描いたり（フェミニズムが興った時代に男性にできないアートとして）と他国のアーチストがやらなかったことをやってきた。


大学１年の時に、このデッサンの先生に紹介されて５０枚くらいのレポートにまとめて試験に提出したが、先生自身も具体の活動が『Informal』の活動として紹介されていたことは知らなかったようだ。

発足当時のメンバーの嶋本氏が（もう８０歳くらい。細くひょろひょろした坊主頭のお爺さん。）アクションアートに望む姿勢に先生は、『無我の境地』や『瞑想』を感じ、ヨーロッパの様な断片的で一直線の時間観念ではなく、時間・アートの継続性・永遠性・全体性を感じる、と評していた。

私のレポートの中に、具体のイタリアにおける活動も記載しておいたこともあって今日のビデオアートの授業に取り入れてくれたようだ。



結局の所、パフォーマンスアーチストとしてしても『具体』を認識しているのはイタリアの芸術界だけなのかもしれない。