夫が猫好きで、夕飯の残りを玄関先にいつも置いているせいか、家の周りに野良猫が住み着いている。
玄関のドアを開けると、パッと何匹か逃げ去る気配を感じる。
すばしっこい猫達の中に、一匹だけのんびりした大人しい猫がいる。
車が通っても逃げずに、返って、車に近づいてくる愚かちゃんなので、隣の住人からは、「ちょっと脳足りん。」なぞと言われている始末。
しかし、こんな野良猫だからうちの子供達の良い遊び相手になった。
イタリアでも爆発的に流行ったアニメ、ポケットモンスターのニャースの事を、こちらでは『メオ』というのにちなんで娘がその猫を『メオ』と名付けた。
他の野良猫なら人間を警戒して、時には威嚇したり噛み付いて来る事もあるのに、メオは甘い声を出して擦り寄って来るし、静かに撫でられるままになっている。
こんな警戒心の薄い猫は、そのうち、車に跳ねられてしまうのではないかとたまに道端で見つけた時に、「車に気をつけなさいよ。」と声をかけてやる。
そのメオが最近、家に来なくなった。前は家の前に住み着いていて、窓や玄関を開けると即、顔を見せに来てくれたのに。
他の野良猫達との縄張り争いに負けた様でもあり、春なので婚約者ができたのかなと想像もしたり。
数日間、顔を見せない事が徐々に増えて行き、もう来ないのかと思った矢先の今週の月曜、娘達を迎えに学校へ行って家に戻って来ると、車を止めるや否や、遠くからメオがこちらに近づいて来るのが見えた。
三本足で歩いていて、遠目からも一本は他の足の倍に膨れ上がっているのが分かった。怪我したのだと分かり、即、家の中へ入れてやった。
元々、食の細い猫だったが、家の中にいても元気なく寝てばかりいるし、足の事も事故なのか病気なのか気になるので次の日、獣医さんに連れて行くことにした。
今まで、イタリアで動物なぞ飼った事がなく、特に猫に関してはまるっきり素人なので、獣医さんがどこにあるのかも分からず困り果てた。
その日は上の娘も熱があって学校を休んでいたが、検査の為に朝病院を2箇所回った後で、ペット用品を売っている店が家の近くにあるのでそこに行って尋ねようと病気の猫も車に入れてペットショップへ。
運良く、獣医さんの住所と電話番号を教えてくれたので、連絡をとってみると、週内でその日の午後だけ獣医さんが来ているとのこと。場所を聞いても行った事の無い町なので、ちょっと不安になった。行くのがなんとなく面倒臭くなったり、もう少し様子を見たら直るかもしれないから放っておこうか、という考えが頭の中をよぎり、どうしようか迷っていた。
しかし、電話を入れた際の、『週内で獣医さんが来るのは今日の午後のみです。』という言葉が妙に脳裏にあり、これは今日行きなさいという事かと思い直して、午後、下の子を学校へ迎えに行って家へ帰って来てから、今度は猫だけを連れて獣医さん探しに出かけた。
途中で何度も脇に車を止めて、午後5時前にピッツエリアでワインをひっかけて酔っ払っているおじさん達に道を訊いたり、銀行前でキャッシュカードでお金を下ろそうとしていた人に聞いたり、道の脇にあったスーパーの駐車場に車を止めて聞いたり、終いには、獣医さんの近くの一本手前の道を誤って右折したら、誰も通らない通りで、Uターンした後、車を脇に止めて、たまに通りかかる車に手をあげてヒッチハイクしている風な感じで道を聞いたりしながら、やっと辿り着く事ができた。
飼い猫用の物が全く家にない為、台所の椅子の座布団に猫を包んで順番待ちをしてのが変だったのか、唯一の東洋人であった為か、人の好奇の視線が集まり、沈黙の中に立っているのも居たたまれなくなくなり私は勝手に状況説明を始めてしまった。しかし逆に、動物を心配する人達が集まる場所だったせいか、私が野良猫を心配している気持ちは周りの人達も察してくれた様で、順番を飛ばされることなく診察してもらえた。
獣医さんにしても、私が見慣れぬ東洋人だったせいか最初ちょっと驚いた風だったが、その日の朝に電話を入れた事と、野良猫が足を怪我している事を伝えるとすぐ見てくれ、若いオス猫である事。他の猫らに噛まれた事が原因で炎症を起こして化膿している事。その傷が一つ二つでない事。熱が40℃あると教えてくれた。『明日(になると元気になるから)見ててご覧。』と、強い抗生物質を注射してくれ、一日後からは飲み薬に変えて10日間朝晩続ける事。怪我した部位の洗浄を朝晩行う事などの指導を受けた。そして、(猫に毎日薬を投与するのは難しいから)この機に飼うか否か決めるんだね、とも言われた。書いてもらった処方箋を持って、既に暗くなった道を家に向かっていたら、帰り道を間違えてしまい、慣れない環境にメオは車内でおしっこやうんちをするわで、やっとのことで家の近くに戻って来れて薬局で薬を買い求める事ができた。帰って来たら安堵したのか一挙に疲れが出て、その次の日は今度は自分の具合が悪くなってしまった。
メオは、家の中の台所の椅子の座布団の上が足に負担がかからないせいかお気に入りの寝場所だったが、時折、起きてはびっこを引きながら玄関のドアへ向かい、恨めしそうな鳴き声を上げて外へ出たがるので、夜中に外へ出してしまった(いや、メオは家の中だとおしっこするのを遠慮している風にも見えた。砂を買ってきても、ちょびっとだけして、外でするので、だったら外がいいのかと思って玄関の扉を開けてしまったのだ)。しかし、それっきり、戻ってこない。
抗生物質の投与と足の洗浄を始めてまだ一日半。
熱があった時は、それでも家の周りを探せば姿を見せたが、もう呼んでも近くにはいない様で気配も感じなくなった。
また、他の猫達と縄張り争いにでもなれば、多少良くなったと言っても片足が不自由なメオに勝ち目はない。ただでさえ、気性が良い猫なのに、このままでいいのだろうか。びっこを引きながら、車に跳ねられてしまうかもしれない。もう、姿も見せないのかな。
猫の世界も気性が良いと生きていくのは大変だ。
いっそ、家猫にしてしまいたい位だけど、生まれた時から田舎暮らしで大地と共に育った野生の猫だから、今更、自由を奪われたくもないだろう。
獣医さんの、『野生の猫は、怪我や病気・事故に遭った時にリスクが高い。連れて来て良かった。』と言っていた言葉が思い出される。
メオ。。。投薬治療はまだ終わっていないのだよ。出て行くんだったら、ちゃんと治ってからにして欲しいのに。君はどこへ行っちゃったの?怪我した野良猫が看病途中で姿を消してしまうのは心配で寂しい。
玄関のドアを開けると、パッと何匹か逃げ去る気配を感じる。
すばしっこい猫達の中に、一匹だけのんびりした大人しい猫がいる。
車が通っても逃げずに、返って、車に近づいてくる愚かちゃんなので、隣の住人からは、「ちょっと脳足りん。」なぞと言われている始末。
しかし、こんな野良猫だからうちの子供達の良い遊び相手になった。
イタリアでも爆発的に流行ったアニメ、ポケットモンスターのニャースの事を、こちらでは『メオ』というのにちなんで娘がその猫を『メオ』と名付けた。
他の野良猫なら人間を警戒して、時には威嚇したり噛み付いて来る事もあるのに、メオは甘い声を出して擦り寄って来るし、静かに撫でられるままになっている。
こんな警戒心の薄い猫は、そのうち、車に跳ねられてしまうのではないかとたまに道端で見つけた時に、「車に気をつけなさいよ。」と声をかけてやる。
そのメオが最近、家に来なくなった。前は家の前に住み着いていて、窓や玄関を開けると即、顔を見せに来てくれたのに。
他の野良猫達との縄張り争いに負けた様でもあり、春なので婚約者ができたのかなと想像もしたり。
数日間、顔を見せない事が徐々に増えて行き、もう来ないのかと思った矢先の今週の月曜、娘達を迎えに学校へ行って家に戻って来ると、車を止めるや否や、遠くからメオがこちらに近づいて来るのが見えた。
三本足で歩いていて、遠目からも一本は他の足の倍に膨れ上がっているのが分かった。怪我したのだと分かり、即、家の中へ入れてやった。
元々、食の細い猫だったが、家の中にいても元気なく寝てばかりいるし、足の事も事故なのか病気なのか気になるので次の日、獣医さんに連れて行くことにした。
今まで、イタリアで動物なぞ飼った事がなく、特に猫に関してはまるっきり素人なので、獣医さんがどこにあるのかも分からず困り果てた。
その日は上の娘も熱があって学校を休んでいたが、検査の為に朝病院を2箇所回った後で、ペット用品を売っている店が家の近くにあるのでそこに行って尋ねようと病気の猫も車に入れてペットショップへ。
運良く、獣医さんの住所と電話番号を教えてくれたので、連絡をとってみると、週内でその日の午後だけ獣医さんが来ているとのこと。場所を聞いても行った事の無い町なので、ちょっと不安になった。行くのがなんとなく面倒臭くなったり、もう少し様子を見たら直るかもしれないから放っておこうか、という考えが頭の中をよぎり、どうしようか迷っていた。
しかし、電話を入れた際の、『週内で獣医さんが来るのは今日の午後のみです。』という言葉が妙に脳裏にあり、これは今日行きなさいという事かと思い直して、午後、下の子を学校へ迎えに行って家へ帰って来てから、今度は猫だけを連れて獣医さん探しに出かけた。
途中で何度も脇に車を止めて、午後5時前にピッツエリアでワインをひっかけて酔っ払っているおじさん達に道を訊いたり、銀行前でキャッシュカードでお金を下ろそうとしていた人に聞いたり、道の脇にあったスーパーの駐車場に車を止めて聞いたり、終いには、獣医さんの近くの一本手前の道を誤って右折したら、誰も通らない通りで、Uターンした後、車を脇に止めて、たまに通りかかる車に手をあげてヒッチハイクしている風な感じで道を聞いたりしながら、やっと辿り着く事ができた。
飼い猫用の物が全く家にない為、台所の椅子の座布団に猫を包んで順番待ちをしてのが変だったのか、唯一の東洋人であった為か、人の好奇の視線が集まり、沈黙の中に立っているのも居たたまれなくなくなり私は勝手に状況説明を始めてしまった。しかし逆に、動物を心配する人達が集まる場所だったせいか、私が野良猫を心配している気持ちは周りの人達も察してくれた様で、順番を飛ばされることなく診察してもらえた。
獣医さんにしても、私が見慣れぬ東洋人だったせいか最初ちょっと驚いた風だったが、その日の朝に電話を入れた事と、野良猫が足を怪我している事を伝えるとすぐ見てくれ、若いオス猫である事。他の猫らに噛まれた事が原因で炎症を起こして化膿している事。その傷が一つ二つでない事。熱が40℃あると教えてくれた。『明日(になると元気になるから)見ててご覧。』と、強い抗生物質を注射してくれ、一日後からは飲み薬に変えて10日間朝晩続ける事。怪我した部位の洗浄を朝晩行う事などの指導を受けた。そして、(猫に毎日薬を投与するのは難しいから)この機に飼うか否か決めるんだね、とも言われた。書いてもらった処方箋を持って、既に暗くなった道を家に向かっていたら、帰り道を間違えてしまい、慣れない環境にメオは車内でおしっこやうんちをするわで、やっとのことで家の近くに戻って来れて薬局で薬を買い求める事ができた。帰って来たら安堵したのか一挙に疲れが出て、その次の日は今度は自分の具合が悪くなってしまった。
メオは、家の中の台所の椅子の座布団の上が足に負担がかからないせいかお気に入りの寝場所だったが、時折、起きてはびっこを引きながら玄関のドアへ向かい、恨めしそうな鳴き声を上げて外へ出たがるので、夜中に外へ出してしまった(いや、メオは家の中だとおしっこするのを遠慮している風にも見えた。砂を買ってきても、ちょびっとだけして、外でするので、だったら外がいいのかと思って玄関の扉を開けてしまったのだ)。しかし、それっきり、戻ってこない。
抗生物質の投与と足の洗浄を始めてまだ一日半。
熱があった時は、それでも家の周りを探せば姿を見せたが、もう呼んでも近くにはいない様で気配も感じなくなった。
また、他の猫達と縄張り争いにでもなれば、多少良くなったと言っても片足が不自由なメオに勝ち目はない。ただでさえ、気性が良い猫なのに、このままでいいのだろうか。びっこを引きながら、車に跳ねられてしまうかもしれない。もう、姿も見せないのかな。
猫の世界も気性が良いと生きていくのは大変だ。
いっそ、家猫にしてしまいたい位だけど、生まれた時から田舎暮らしで大地と共に育った野生の猫だから、今更、自由を奪われたくもないだろう。
獣医さんの、『野生の猫は、怪我や病気・事故に遭った時にリスクが高い。連れて来て良かった。』と言っていた言葉が思い出される。
メオ。。。投薬治療はまだ終わっていないのだよ。出て行くんだったら、ちゃんと治ってからにして欲しいのに。君はどこへ行っちゃったの?怪我した野良猫が看病途中で姿を消してしまうのは心配で寂しい。
コメント
イタリア情報楽しみにしています。
イタリアでも流行ったんですね〜
イタリアでも大流行しましたよ。日本の古いアニメもかなり受けています。